ぎこっかい[擬国会](名)国会の組織に似せて、政治上の討論をする会合。
三省堂国語辞典「初版(1960)」
//「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」見坊行徳・三省堂編修所[編著]
いつ「消えた」ことば?
三省堂国語辞典では第二版(1974)で消えた。
用語解説:「擬国会」とその背景
1890年10月には本物の帝国議会に先んじて、神田一ツ橋外にあった帝大講義室で催されている。1910年代には各大学で盛んだった。
「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」見坊行徳・三省堂編修所[編著]
国立国語研究所のコーパス横断検索で見る「擬国会」
「1910年代には各大学で盛んだった」というくらいなので、少しは引っ掛かるに違いない、と思って横断検索を行ったが、これが見事に一例も釣れなかった。ボウズである。
綴りの揺れを勘案して以下の表現でも試みたが全敗。
- 疑+国会
- 疑似+国会
- 擬似+国会
- 模擬+国会
ちなみに同様の検索条件で以下はヒットを得られたので、キーワードの設定方法の誤りではない。
- 擬+陽性→6件
- 疑+陽性→5件
なお上の「擬+陽性→6件」と「疑+陽性→5件」との間には重複(かぶり)は一切なく、ヒットがあったのは全て「現代日本語書き言葉均衡コーパス BCCWJ」であった。従ってBCCWJ内に合計11件の「擬陽性/疑陽性」は収録されており、対して「擬国会/疑国会」は一切のコーパス内に収録がなかった、と言える。
コーパス検索時の検索条件式
キー: 書字形出現形="擬"
AND 後方共起: 書字形出現形="国会" ON 1 WORDS FROM キー
WITH OPTIONS tglKugiri="|" AND tglBunKugiri="#" AND limitToSelfSentence="1" AND tglFixVariable="2" AND tglWords="20" AND unit="1" AND encoding="UTF-16LE" AND endOfLine="CRLF"
今日のアイキャッチ画像について
アイキャッチ画像はWikimediaより「早稲田大学擬国会(1910年)」を得て利用した。Wikimediaには他に3大学の擬国会の様子を伝える写真が収録され「三省堂国語辞典」の「1910年代には各大学で盛んだった」という記述を裏付けることとなった。
![第1回関西大学擬国会(1915年)](https://daily.zah.jp/wp-content/uploads/2024/01/第1回関西大学擬国会(1915年)-1024x600.jpg)
![法政大学擬国会(1927年頃)](https://daily.zah.jp/wp-content/uploads/2024/01/法政大学擬国会-1024x614.jpg)
![明治大学擬国会(撮影年は「明治末期」とのみ)](https://daily.zah.jp/wp-content/uploads/2024/01/明治大学擬国会.jpg)
記事の着想
この記事は「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」から着想を得た。
これは1943年(昭和18年)5月10日に出版された「明解国語辞典」の初版から80年を迎えたことを記念した三省堂の事業の一環で
80年にわたる9回の改定で削除された1000語
「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」帯コピーより
を収録した全240ページからなる軽快でリズミカルな書籍である。
「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」の著者、見坊行徳(けんぼうゆきのり)氏について
1943年の「明解国語辞典」の中心者で、これを継いだ「三省堂国語辞典」の初代編集主幹ともなった見坊豪紀(けんぼうひでとし)氏のお孫さんだそうだ。
YouTubeで「辞書部屋チャンネル」をご存じの方は「あぁ、あの『辞書ソムリエ』の人か」ということで諒解されることだろうと思う。
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