臥龍窟(がりょうくつ)

臥龍窟 文豪のことば

まだ世に知られないでいる大人物が住んでいる所

「大辞林」第四版 三省堂

ゆくゆくはすぐれた人物として世に出る人が、ひとまず隠れ住んでいる所

「精選版 日本国語大辞典」 小学館

両辞典が共通して挙げる用例

「此下宿が群鶴館なら先生の居は慥かに臥龍窟位な価値はある」

「吾輩は猫である」 夏目漱石

漱石が「猫」で用いている他の箇所

嫁に來てから滋養分でも食はしたら、少しは延びる見込があると思つたんだ」と眞面目な顏をして妙な理窟を述べて居ると門口のベルが勢よく鳴り立てゝ頼むと云ふ大きな聲がする。
愈(いよいよ)鈴木君がペン〳〵草を目的に苦沙彌先生の臥龍窟を尋ねあてたと見える。
細君は喧嘩を後日に讓つて、倉皇針箱と袖なしを抱へて茶の間へ逃げ込む。

語の背景

「臥龍」=「まだ見出されていない傑物」の語義は三国志に由来。

三顧の礼をもって迎えられる以前の諸葛亮(孔明)のことを「臥龍/伏龍(伏せている龍)」と形容し、また同じく世に認められる前の龐統(士元)のことを「鳳雛(鳳凰のヒナ)」と形容することと対比した。

日本国内で「臥龍」を冠する名称

特に「臥龍山/臥竜山」を称する地名は多い。長い尾根を持ち、伏せた龍のように見える地形に、水神(竜神)信仰が重なると付されやすい地名なのかもしれない。

日本各地の臥龍山/臥竜山

標高は全てYAMAP調べ。

広島県北広島町の「臥龍山」

    • 標高1,223.4m
    • 西中国山地国定公園に含まれ「中国百名山」の一つに数えられる
    • 旧称「苅尾(かりお)山」で1947年版の5万分の1地図で「苅尾山」が「臥龍山」に改められたため、地元には旧称に復すべしとの議論がある模様

    秋田県能代市の「臥竜山」

      • 標高37m
      • 近くにある「三頭沼(さんとうぬま)」の方が有名で、頭の三つある蛇の住む沼であったとされるので、臥竜山と呼応した伝説を形成していたかもしれな

      石川県金沢市の臥竜山

      • 標高141.15m
      • 公式名「卯辰山」
      • 別称「宇多須山」「向山」「夢香山」

      長野県須坂市の臥竜山

      • 標高471.3m
      • 旧須田城の城址にあたる
      • 城址を中心とした臥竜公園の小山(丘)が「臥竜山」とされる

      建築・建造物

      青森県鰺ヶ沢町種里の臥龍院(仏教寺院)

      • 津軽氏の開祖である大浦光信が築城し一帯を平定した拠点が種里城、その城下に建立されたのが「鳳松院」
      • 慶長年間に築城された弘前城へ津軽氏が入城するにあたり「鳳松院」を城下へ移転、伴って跡地に建立されたのが臥龍院
      • 曹洞宗功樹山臥龍院、津軽八十八ヵ所霊場第七十二番札所、本尊は釈迦如来
      • 500mほど南南西に進むと「津軽藩発祥之地」の碑

      栃木県足利市の臥龍院

      • 臨済宗円覚寺派臥龍院とされるが無住(2016年時点)
      • 足利市重要文化財指定の「臥龍院のエドヒガン(シダレザクラ)」が春には話題

      愛媛県大洲市の臥龍山荘(山荘)

      • 大洲城の東、肱川(ひじかわ)に面した小高い「蓬莱山」に、第三代藩主の加藤泰恒が「龍が伏した姿のようだ」として「臥竜山」の別称を与えたのが名前の起こり
      • 明治年間に、同地出身の豪商である河内寅次郎が、財を成したのちに土地を購入して建設した山荘が「臥龍山荘」
      • 「臥龍院」「不老庵」「知止庵」からなり、うち「臥龍院」は数寄屋造りの母屋で、国の重要文化財

      今号のアイキャッチ・グラフィック

      今号はDALL-E 3に、ちょっと長すぎるかな?と思いつつ、以下のプロンプトを与えて導いた。

      Create an image of ‘The Dragon, laying himself down in his Lair’, as a neoclassical historical painting, in the style reminiscent of Jacques-Louis David. The lair is actually a cave, and the dragon symbolizes a hidden potential great individual. Aspect ratio of 16:9.

      アイキャッチ画像に採用したグラフィックは、上のプロンプト入力から最初に得られた2点のうちの一つ。プロンプト解釈は以下のように記されていた。

      Depict ‘The Dragon, laying himself down in his Lair’ as a neoclassical historical painting, in a style reminiscent of Jacques-Louis David. The artwork should portray a majestic dragon, symbolizing a hidden potential great individual, gracefully reclining in its lair, a grand and mysterious cave. The painting must reflect the neoclassical aesthetic with clear lines, structured composition, and classical forms. The setting should be serene and classical, with the cave integrated into a noble and idealized landscape, typical of neoclassical art. The color palette should be muted yet distinct, emphasizing the dignity and significance of the scene.

      プロンプト解釈の逐語訳

      ジャック=ルイ・ダヴィッドを彷彿とさせる様式で、新古典主義の歴史的絵画として「隠れ家に身を横たえる龍」を描くこと。作品には、潜在能力を秘めた偉大な個人を象徴する雄大なドラゴンが、その隠れ家である壮大で神秘的な洞窟に優雅に横たわる姿を描くこと。明確な線、構造的な配置、そして古典的なフォルムなど、新古典主義の感性を反映した絵画でなければならない。光景は静謐かつ古典的であるべきで、洞窟は新古典主義美術に典型的な、高貴で理想化された風景の中に溶け込んでいること。色調は抑制的でありながら際立っていること、この場面の威厳と重要性を強調すべきである。

      他の条件を与えた時のDALL-Eのアウトプット紹介

      今回は何パタンか試して新古典主義に落ち着いた。特に当初は「龍が伏せていること」を明記することを怠り「龍が潜んでいる」と与えてしまったために「臥龍」の「臥」を満たさない作例が続いた。

      「アントワーヌ・ヴァトーのようなロココ様式の絵画のように」と指定したパタン。半龍・半人の怪しいクリーチャーが見え隠れしていて楽しい。

      「フランシスコ・デ・ゴヤのような手法で、伝説を描いたロマン主義の絵画として」と指定したパタン。ドラゴンはどこへ隠れてしまったのだろうか。光彩と色彩はなかなかイイのだが。

      「フランシスコ・デ・ゴヤのような手法で、伝説を描いたロマン主義の絵画として」と指定した作例
      「テオドール・ジェリコーのようなロマン主義絵画として」と指定したパタン

      「テオドール・ジェリコーのようなロマン主義絵画として」と指定したパタン。この回から「伏して」明記した。空にキシャーッと怪気炎を吐く感もイイし、周囲の赤い服の人物もいいが、ちょっと洞窟から出ちゃってるのがなぁ。

      新古典主義で敢えて「龍の群れ」と指定したパタン。どこかの部室か雀荘か、みたいな感じになってしまった。

      新古典主義で「龍の群れ」と指定したパタン
      「伏した龍」という明示を欠いたまま「ダヴィド風の新古典主義」を指定したパタン

      「伏した龍」という明示を欠いたままに「ダヴィド風の新古典主義」を指定したパタン。やはり漫然としてしまい、数頭は悠然と滑空してしまっている。

      そういうわけで、DALL-Eとの間で交わすディスカッションは、ほぼ生身の人間のイラストレーターさんと交わすようなディスカッションと勘所に大きな違いはない気もしてくる。一時のような「呪文ひとつで出力がガラリと」みたいな楽しみ方というのも、たぶんソロのグラビアアイドルのような出力を追い込んでいく工程ではまだまだ残っているのかもしれないけれど、提案してくれる図柄に流されていきやすい私のような者にとっては、このくらいの方が手離れが好くて嬉しい。

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